[ドイツ語]今年の言葉2022
ドイツ語協会(Gesellschaft für deutsche Sprache)がその年の世相を象徴する言葉10個を選ぶ「今年の言葉(Die Wörter des Jahres)」の2022年版が発表されました。
この取り組みは今年で46年目となり、世界にある同種の取り組みの中でも元祖にあたるといいます。ちなみに、我が国の「新語・流行語大賞」は今年で39年目。
1. Zeitenwende 「時代の転換」
オラフ・ショルツ連邦首相が2022年2月27日、ロシアのウクライナ侵攻を受けての演説で用いた言葉。
ドイツ連邦政府の公式動画。
公式の書き起こしもあり。英語・フランス語の訳も用意されています。
2. Krieg um Frieden 「平和のための戦争」
これもウクライナ侵攻関連の言葉。
3. Gaspreisbremse 「ガス価格ブレーキ」
ガス価格高騰に苦しむドイツが価格抑制策として上限額を設定したことを指すそうです。
4. Inflationsschmerz 「インフレの痛み」
ドイツも例にもれずインフレの渦中にあります。
5. Klimakleber 「気候粘着」
これはなんと訳せばいいんだろう… Klima 「気候」 + Kleber 「粘着するもの・接着剤」。
環境団体 The Last Generation が展開している、道路などに体を接着する抗議活動を指しているようです。ドイツではドイツ語訳の名前 Letzte Generation で活動を展開しています。
6. Doppel-Wumms 「ダブルボカン」
Wumms は低く響く大きな音を表すオノマトペ。英語では boom や bang にあたり、日本語なら「ドーン」とか「ドカーン」。これも訳しにくいけれど、なんとなく「タイムボカン」を思い出したのでリスペクトを寄せてみる…。
ショルツ首相がエネルギー価格高騰を受けての支援策として2000億ユーロの拠出を決めた際、ガス料金と電気料金の両方の高騰に対策を打つことを指してこの言葉を用いたもよう。
この不思議な言葉がドイツ語ネイティブにどのように感じられるものなのかよくわからないのですが、軽薄で印象論的だとしてネガティブにとらえる見方もあるようです。
なお、ショルツ首相は財務相時代から自身の政策を Wumms と呼ぶことがあったそうです。
7. neue Normalität 「新しい正常」
日本でいう「ニューノーマル」や「新しい生活様式」などコロナ禍での暮らしが一見連想される言葉ですが、 neue Normalität はむしろ「さまざまな制限が緩和されたコロナ後の生活様式」を指しているようです。
ドイツ語協会による説明を引用:
Die Covid-Pandemie ist keineswegs vorbei, aber in vielen Lebensbereichen hat eine neue Normalität (Platz 7) Einzug gehalten, zu der nur noch teilweise Maskenpflicht, Abstandsregelungen und andere Corona-Maßnahmen gehören.
私訳:
COVID パンデミックはまだ決して終わってはいないが、生活の広い分野に neue Normalität (第7位)は浸透している。neue Normalität はごく部分的にしかマスク着用義務、ソーシャルディスタンスやその他のコロナ対策を含んでいない。
8. 9-Euro-Ticket
今年の6月~8月に展開された、電車をはじめとする公共交通機関が9ユーロで1ヶ月使い放題になる夢のチケットのこと。
そして、2023年にはその後継として 49-Euro-Ticket こと Deutschlandticket が計画されているそうです。
9. Glühwein-WM 「グリューワインワールドカップ」
WM は Weltmeisterschaft 「世界選手権」の略で、特に FIFA ワールドカップを指します。グリューワインはドイツでクリスマスの飲み物として親しまれているホットワインのことで、日本でもクリスマスマーケットやカルディで見かけます。
熱く盛り上がるワールドカップとしっとり厳かなクリスマスは相性が悪いと考える人は少なくなかったようで、ワールドカップの試合中継を流してお客を集めるか、クリスマスらしい静かな雰囲気を優先するかでクリスマスマーケットや飲食店が頭を悩ませた…という話もあります。そのうえ開催国カタールへの政情批判なども絡んでくるので話が複雑。
10. Waschlappentipps 「タオルのアドバイス」
Waschlappen 「タオル」 + Tipp 「助言」。バーデン・ヴュルテンベルク州首相ヴィンフリート・クレッチマンが、省エネのためシャワーを減らして体を拭こう…と発言して顰蹙を買った出来事を指しているとのこと。
この発言があったのは8月のこと。当時ドイツは猛暑だったはずで、シャワーで汗を流さないのはかなり厳しかったのでは。