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勉強したることども

英語 subtract を substract と間違えるのは語源的にはけっこう由緒正しかったかもしれない

英語 subtract (引き算する)を substract だと思い込んでいた、という人の話をきくことがあった。いわく、「サブトラクト」よりも「サブストラクト」のほうが発音しやすい、とも。

substract は古語らしい、とも話していた。おそらく Weblio の下記記事を見たものと思われる。

ejje.weblio.jp

そうなると subtract と substract 両者の語源が気になるな、ということで KDEE こと英語語源辞典を引いてみた。substract は立項されていないが、代わりに substractor 「中傷者」というのがあった。すでに廃語で、シェイクスピア十二夜』(1601-2)に出てくるという。語源の記述は次のとおり。

◆ † substract to withdraw, take away, belittle (↼ L substractus (p.p.) ↼ substrahere (変形) ↼ subtrahere 'to SUBTRACT') + -OR2

英語に subtract と substract があった(?)ように、ラテン語にも subtrahere と substrahere があったのか。

subtract のほうも引いてみると、やはり同じくラテン語 subtrahere から来ている。こちらは substrahere を経由せず直接英語に入った。(初出は1533年とのことで、 substractor より少し早い。)

これらのことを思うと、冒頭に書いた「サブトラクト」よりも「サブストラクト」のほうが発音しやすいという主張ももっともな感じがする。なんのことはない、われわれ日本語話者だけでなくラテン語話者も同じように言い換え(言い間違え?)ていたのだった。

ちなみに subtract のほうをもう少し読み進めると、名詞形 subtraction の初出は1400年ごろと subtract より早い。そしてこの記述。

◇ subtraction からの逆成とする説もある.

ちょうどきのう記事にした meliorate - melioration と同じパターンだ。こういうの、ほかにもけっこうあるのかな。

heartyfluid.hatenablog.com