今年の夏にオーストリア映画週間2024で見た映画『ウィーン10区、ファヴォリーテン』が、この冬には EU フィルムデーズ2024でも上映されるとのことです。だったらもう1回みたいな。
ほんとうはもう一度見に行って文章に起こすのが確実だと思うんですが、忙しい年末とあって予定が合うかまだわからないので、夏の記憶を掘り起こしつつメモします。この映画を見てくれる人が少しでも増えるといいなと願いつつ。
オーストリア映画週間での紹介文を引用します:
「移民のヨーロッパ」、その最前線の教育現場。生徒たち(と担任の先生)の日々の冒険、失敗、闘い、成功が、子供の目線で見事に活写された、子供時代の讃歌とも言える心打つドキュメンタリー。 伝統的な労働者の街として知られているウィーンのファヴォリーテン地区。そこは今や移民とアイデンティティの間で揺れる現代ヨーロッパの鏡とも言える状況となっている。ファヴォリーテン地区にある小学校の生徒のほぼ全員が移民の子であり、様々な民族的・文化的背景を持った子供たちが同じクラスで学んでいる。公共教育の「危機的状況」が叫ばれるその最前線で実際に何が起きているのか。ベルリンを始め数々の映画祭で受賞経歴のあるドキュメンタリーの巨匠ルース・ベッカーマンが、そこに通う子供たちを3年かけてその成長を追いかける。
移民問題というシリアスなテーマを扱うドキュメンタリーでありつつ、あんまり暗くないと感じたのは子どもたちの屈託のなさというか。カメラが回っていてもかまわずいたずらやけんかをしかけるがきんちょを見ていると、妙に心が安らぐのでした。どちらかというと学級はやや崩壊しかかっているはずなんですが、不思議と。
ドイツ語学習者として胸に刺さるのは、移民の子どもたちがえっちらおっちらドイツ語と格闘しているところ。「消防士」という単語が出てこない子どもに「Feuerwehrmann だよがんばれ」と心で声援を送ったり、代名詞を取り違える子どもに「わかる、それやっちゃうよね」と共感したり。自分と年齢が近いのは完全に先生とか親のほうなのに、自分自身ドイツ語が不自由なものでつい子どものほうに感情移入してしまうという、不思議な鑑賞体験でした。なのでドイツ語をやっている人にぜひみてほしいです。