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勉強したることども

『英語語源ハンドブック』にこじつけて学ぶドイツ語 #43 quickly

unsplash より、繁茂する草。ドイツ語話者にとっての "quick" はこういうことなのかもしれない。

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HEE こと『英語語源ハンドブック』にこじつけてドイツ語の語源その他について書くシリーズ。

前:#42 paint

第43回は quickly から。

quick の派生語で古英語から見られる。quick 自体も古英語から見られる本来語で、印欧祖語 *gwei(ə)- に基づく。[...]もともと quick が「生きている」を意味し、そこから「生き生きとした」に広がり、それが「素早い」という意味にも広がった[...]。

英語本来語ということでドイツ語の同根語を求めたいが、思い当たるものがない。そこで KDEE こと英語語源辞典に助けを求めたところ、keck 「威勢のいい、粋な」という形容詞がそうなんだという。この keck という単語は知らなかった。

Duden 語源辞典いわく、古高ドイツ語から中高ドイツ語にかけては kec と quec という2つの綴りが併存していた。k- で始まる綴りは古高ドイツ語後期に南ドイツで発祥したもので、これが現代の正書法につながった。

いっぽう調べを進めると、q- で始まる同根語もいくつか現存していることがわかった。たとえば erquicken 「元気づける、気分を爽やかにする」という動詞は古高ドイツ語から使用がみられるという。前綴りを伴わない quicken も中高ドイツ語まではあったようだが、現在は廃語とのこと。また verquicken 「融合させる」は比較的新しい動詞で、17世紀に錬金術用語として使われたのがはじまり。Quecksilber 「水銀」との合金をつくることが原義だった。

また名詞では、die Quecke というのがある。Duden によれば、並外れた発芽力と強靭な根茎を持つことから「生命力の強い草」という意味で名づけられたイネ科の雑草の一種とのこと。アクセス独和辞典第4版は「カモジグサ」の訳語をあてているが、カモジグサという種そのものはヨーロッパには分布していないようだ。ドイツ語版 Wikipedia では、その上位の「エゾムギ属」の見出し語に Quecken が充てられている。いずれにせよ、葉っぱの細長いよくある雑草をイメージしておけばおおよそ間違いないのだろう。

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さらに、アクセス独和辞典にはそもそも quick そのものが立項されていることに気がついた。北部方言で「元気な、活発な」を意味するという。複合語 quicklebendig 「はつらつとした」については『アクセス』では方言との表記はなされていないものの、Duden 語源辞典では低地ドイツ語由来との説明がある。

列挙してきた同根語を見渡してみると、英語圏に近いドイツ北部からドイツ南部へ離れていくにつれて、qui- → que- → ke- と移り変わるようすがなんとなく見て取れる。それとは別に、動詞形の quicken は que- がウムラウトしているようにも見える。

最後に、quick / keck の語源である印欧語根 *gwei(ə)- はギリシャ語で bíos になった。ここから派生した接頭辞 bio- は、自然が好まれるドイツ文化でしばしば目にする。たとえば der Bioladen 「自然食品店」など。

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もしかすると、ここまで見てきたドイツ語本来語たちよりもこの bio- 系列の語のほうが、ドイツ語ではむしろよく見かけるかもしれない。

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