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勉強したることども

『英語語源ハンドブック』にこじつけて学ぶドイツ語 #31 garden

アジサイの庭っていいですよね。Unsplash より

www.kenkyusha.co.jp

HEE こと『英語語源ハンドブック』にこじつけてドイツ語の語源その他について書くシリーズ。

前:#30 fact

第31回は garden から。

ゲルマン語由来の語で、13世紀にフランス語から借用。印欧祖語 *gher- (囲う)に基づく。[...]ゲルマン語からラテン語に入り、それがフランス語として発達し、そこから英語に入った。これに対し、yard (囲った地面、中庭)は同じ語がゲルマン語から直接発達した英語本来語である( /g/ → /j/ は古英語期に起きた音変化)。

ゲルマン語由来でありつつ、ラテン語・フランス語を経由しているというややこしいいきさつ。

対応するドイツ語 der Garten 「庭」は、 Duden 語源辞典によると古高ドイツ語 garto →中高ドイツ語 garte をへてゲルマン語から直接発達している。英語 garden とドイツ語 Garten では1文字しか違わないのに、その道のりはずいぶん異なるのだった。なお d と t の違いは第2次ゲルマン子音推移にあたる。

さて、このあと HEE はゲルマン本来語 yard / Garten にあたるラテン語として hortus 「庭」に言及し、それに由来する英単語をいくつか挙げている。いっぽう Duden も hortus に由来するドイツ語語彙として、die Hortensie 「アジサイ」を紹介している。

Die asiatische Zierpflanze wurde von dem französischen Botaniker P. Commerson (1727‒1773) im 18. Jahrhundert nach der Astronomin Hortense Lepaute, der Frau seines Freundes, benannt. Der Vorname Hortense gehört zu lateinisch hortus »Garten«.

18世紀フランスの植物学者フィリベール・コメルソンが、友人の妻で天文学者の Hortense Lepaute の名をとってその植物に命名した。そしてその Hortense という人名がラテン語 hortus に由来するのだという。実際アジサイをフランス語で hortensia というそうだから、フランス語 hortensia がドイツ語に入って Hortensie になったということだろう。

…と思って Hortense Lepaute なる人物のことを調べてみたら、英語版 Wikipedia に妙なことが書かれていた。

en.wikipedia.org

この天文学者の正しい名前はニコール=レイヌ・ルポートという。コメルソンはルポートの名にちなんでその植物の名を Lepautia ないし Peautia としようとしたものの、結局は Hortensia となった。知人の名にちなんで命名しようとしたとの話だけが別に伝わってしまったのか、その植物名からルポートのフルネームが Hortense Lepaute だと誤解された…とのこと。結局のところ、独 Hortensie < 仏 hortensia は単にラテン語 hortus からとられたようだ。

こんなパターンの民間語源があるとは。そしてしれっと Duden に載ってしまうとは。

なお英語 hydrangeaアジサイ」は、KDEE こと英語語源辞典 によると hydro- 「水の」 + -ange 「脈管、果被」 + -a (名詞語尾) から成っており、ラテン語の学名がそのまま英名となったもの。「庭」とは関係なかった。

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